泣くロミオと怒るジュリエットその2
コロナの影響で、大阪公演とりあえず3月10日まで休止になりましたね……。
状況を考えると仕方ないとも思うけれど、すごく面白くていい舞台だったし、桐山担もそうじゃないひとも、たくさんの人が観れたらいいなあとも思ってたから、悲しいなあ。
再演とか映像化とか、何かしら安全を確保できる形で、多くの人がこの物語に触れられるといいなあと思います。
早く収束して、人が集まるような場所で行われるエンタメも、普通に楽しめるように戻ってほしいなあ~。
相変わらずネタバレしかないです。
今回の「泣くロミオと怒るジュリエット」は、シェイクスピアのロミジュリベースに大きく設定を変えて、戦後の関西の港町が舞台。キャストが全員男性で、関西弁、でも名前や地名は原作通りという、なんともごちゃごちゃな世界観で、設定だけ聞くと意味わからんってなる。
でもふたを開けてみてみれば、しっかりロミジュリ。設定が変わったことで、原作ではぶっ飛んでる部分に、ちゃんと説明がつくようになってる。面白い舞台でした。
思ったことの羅列をブログとして残すのも謎ですが、とりあえず覚書です。
ようやくわかってきたこと、まだわからないこと、考えていることをバーっと書いていこうと思います。
演じてる人の話ではなく、物語のお話。
①ベンヴォーリオとロミオ
ベンヴォーリオについて
ベンヴォーリオって、波風立てたがらない客観的で冷静な男だけど、割と重くて強いこだわりがある人な気がする。
それがたぶん、「三国人」って立場と「ロミオ」なのかな。
「三国人」として差別されることと、「ロミオ」関連は熱くなってるイメージ。
感情を表に出してたのは↓のときくらいかな。
・身寄りのない三国人ってだけで、犬みたいに追い払おうとするひとたちの話をするとき
・ロミオに裏切られたとわかったとき(ロミオが長年の友の死に目もくれず、ジュリエットのもとに行っていたとわかったとき)
・カモメ埠頭で、降ってくる黒いカーバイトのカスを見ながら「捨てたもんにしっぺ返しくらうんを見てみたいです」(親友の絆を捨てたロミオが痛い目に合うのを見てみたい、っていう怒りと、その先の展開を匂わせるシーン)
ベンヴォーリオの愛
どんな時もロミオのことを心配して、やさしく寄り添って、時には身を挺して守るベンヴォーリオ。
その要素一つ一つに気がつくたび、ラストがしんどい……
ということでこれはただ羅列。
・ロミオが屋台の前で、「自分の明日が想像できなくて怖い、希望がない、虚しい」という話をしているときの表情の優しさ。仏。
・ダンスホールのシーンで、ジュリエットを守るロミオを心底驚いた表情で見る
・ロミジュリを茶化すマキューシオに怒る
・(ジュリエットと初対面したとき)「あれ(ジュリエット)のどこがよかった?」
・一幕ラストの雨の中、ジュリエットへの愛を叫ぶロミオを抱きしめる
・(ロミオが裏切ったことを知る直前)自分はぼこぼこに殴られながら「ロミオは俺たちが守る」
ベンヴォーリオが手紙を渡さなかったのは?ベンヴォーリオは、ロミオに目を覚ましてほしかっただけなのかな。
ジュリエットが死んでいなくなったことを知れば、ロミオの目が覚めて、元の通り親友としてやっていけるんじゃないかって期待してた。
だから、ジュリエットが死んでいても、「この目で確かめる」「おれも死ぬ!」って言うロミオに、毒薬を渡したんだろうなあ。
ロミオが毒薬を受け取る瞬間、取った直後まで、ベンヴォーリオは(ロミオを止めようと)毒薬に手を伸ばしていた。
きっと、ベンヴォーリオは最後の最後まで、ロミオが正気に戻ってくれることを期待してたんだろうな。悲しい。
ロミオは全部わかってたのか
桃色劇場前のシーンでロミオが去ったあとのベンヴォーリオのセリフ、
「ロミオ、おまえのことやから全部わかってたんやろ、きっとそやなあ。」
って実際どうだったんだろうねえ。
ベンヴォーリオが自殺するつもりなんてなくて、ロミオを殺すために毒薬を用意していたって、ロミオはわかっていたのかな?
私は、「ベンヴォーリオが自殺するために用意した」っていう嘘は、ロミオも信じてない気がする…。
そこを信じていたら、その部分へのリアクションはあったと思うしなぁ……。
ベンヴォーリオが「ロミオを試すため」に用意したんだ、ってことはロミオも理解していたんじゃないかな。
そのうえで、それでもジュリエットがいないなら死を選ぶことは彼の中で決まっていたから、あっさり受け取ったんだろうなあ。
ロミオ結構、残酷。
ベンヴォーリオが言ったみたいに「俺ら(マキューシオとベンヴォーリオ)に義理立て」したわけじゃない。
ただ、全ての基準がジュリエットなだけで。
それってベンヴォーリオが一番嫌だったことだよねえ。
ほんとに、報われない。
白頭山東洋治療所前であれだけ衝突したのに、ジュリエットへの愛を語っちゃうあたり、ベンヴォーリオへの配慮1ミリもないし。
「マキューシオの死も、おまえの涙もすべて忘れて、ジュリエットからの手紙を待っていた罰が当たったんか?」とかベンヴォーリオに言っちゃうし、ほんとにゆるゆるロミオくん。。
あとは、「ロミオ、俺はお前のこと…」「いうな、別れがつらくなる」のシーンも考えたい。
お友達と、これ何言おうとしていたんだろうね、てなりました。
まあでも、愛してる、なのかな。
ベンヴォーリオが何を言おうとしていたのか、ロミオがなんだと思ってたのか。
あとは、その二つは一致してたのか。
私は、ロミオは本当にジュリエットのことしか考えられなくなってる素直で純粋な青年だと思ってるので、ベンヴォーリオにはひどいけど、ベンヴォーリオは「好き、愛してる」って言おうとしてて、ロミオはあくまで親友としての「好き」だと思ってるんじゃないかな~~~って思います。
ロミオが思ってたのは、憎んで激怒したけどそれでも親友として嫌いになれない好き、って意味の好き。
ロミオは、ベンヴォーリオのそういう意味の愛に、気づけるひとじゃないと思うんだけどどうかな。
そこに気付けるなら、諸々もっと細やかなんじゃないかな……。
ほんとにベンヴォーリオが不憫…。
②マキューシオとロミオ
ロミオのこといい友達だとは思ってるけど、すぐネガる癖はめんどくさいと思ってそう。笑
なんで仲良しなのかわからないくらい正反対な二人、っていうイメージ。
だって、ロミオが「明日への希望がない」話をしている最中に寝っ転がってしまうマキューシオさん。
マキューシオ不安になって考えるのが嫌だ。明るく、今を楽しく、燃え尽きたい。生き急いでるかんじ、な人じゃんか。
ロミオと不安の根源は同じかもしれないけど、表現の仕方が真逆。
ロミオは不安・むなしさと刹那的な楽しみのギャップがしんどいから、楽しいことをしない。
マキューシオは楽しいことしかしないことで、そのギャップに気付く間すらなくそうとしているのかな。
ベンヴォーリオいなかったら一緒にいない気がする二人。
③マキューシオとベンヴォーリオ
マキューシオは、ロミオよりもベンヴォーリオとのほうが関係性深いイメージ。
二人ともまだモンタギューに残ってるからなのかな。
考え方が近いところがあるのかな。
ロミオは「親友」マキューシオは「悪友」と言い放っちゃうベンヴォーリオが面白い。
でも、「おれが死んだら泣いてくれるか?」と唐突に聞くマキューシオにびっくり。しかもけっこうガチトーン。
マキューシオは、二人の悩みも個人的なことも聞く割には、すぐ茶化すし、表面だけ聞いてすぐ流す。深堀しようとしない。
ほんとに享楽的。
だからこそ、ガチトーンでベンヴォーリオに唐突に聞いているのはとても印象に残る。
ベンヴォーリオがロミオに向けているような愛とは別物だと思うけど、マキューシオにとって、ベンヴォーリオは一つの指針みたいなものなのかなあと思った。
信じて拠り所にしている相手……。
…にしても唐突すぎるよね、謎が深まるばかり……もう観れないし、これなんでなのか、だれか教えてください笑
④ロミオとジュリエット
ロミオがジュリエットに惚れるのはすごくよくわかるし、物語を通して意味が持たされている。「明日への希望」だよね。
でも、ジュリエットは何でロミオにそんなに惚れちゃったんだろう。
ただただ、惚れっぽいってことなんかな。
稽古始まる前の段階の柄本時生さんのインタビューに「ジュリエットはロミオの相手役としてのキャラクター(ニュアンス)」って書いてあって、めっちゃ納得した。
各キャラクター、それぞれの重めのバックグラウンドととらわれている思想が表面にぐいぐい出てくるけど、ジュリエットは薄め。
「明日への希望」くらいで、こだわりや縛りがあんまりみえない。
強いて言えば「愛」にこだわっていたのかなあ。
愛におぼれがちだからそのまま命を絶っちゃったけど、これロミオじゃなくてもいいやんね、この人多分……と、元も子もないこと言ってみたり。
いやマジでベンヴォーリオかわいそうだな……(そこかい)
⑤カラスとティボルトの関係性
お金でつながってるのかと思いきや、結構愛が深い??
最初の登場時、カラスがティボルトからお金をもらっていたからてっきりお金で贔屓してるのかと思ってたけども。
ロミオのことを絶対に許さないカラスだったけど、甥ティボルトを殺された恨みもあるのかな……って思ったりもしてしまった。
「そのときの日本の法律」が彼の正義だから、人殺しは許せないっていうのもあると思うけど。
すごいふんわりしてる。笑
⑥ティボルトとマキューシオ
生き急いでるトップ2。喧嘩したい、決着つけたい二人。
決闘前は殺すつもりはない、ってソフィアに言うティボルトだったのにナイフを渡されたら衝動的にマキューシオを刺してしまった。
刺したあと、マキューシオが最期の言葉を言っている間、ティボルトの指、すっごく震えてた。
殺したかったわけじゃ、なかったんよね。
その後の、亡骸に対する狂気的な行動は、戦時中に「処置」した三国人の少年とマキューシオを重ね合わせてしまったのかな。
⑦ロミオとティボルト
ロミオがティボルトを刺しちゃった話。
ひとつ前のブログで、わからなかったなあって書いていたんだけど、すごくわかりやすくなってた。めっちゃ腑に落ちた。
ティボルトが、マキューシオの亡骸を揺さぶって乱暴に持ち上げていたから、ロミオは止めたかったんだね。
力づくで止めようとして跳ね飛ばされて、目の前にナイフがあったから手に取った。
ナイフをとって周りに向けていたら、ティボルトがそのナイフを引っ張って自殺に近い形で刺してた。
刺し殺すつもりまではなかったんだろうなあロミオも……。悲しいね。
ざーっとこんな感じ。
あとは、前のブログ、誰か読んだ??ってくらい(読んでない)、私がわからなかった部分がわかりやすくなってた。すごい。笑
あんまり舞台慣れしていない、私みたいなライトな層でもわかりやすい言葉や表現を選んで上演してるのすごいなあと思いました。
たぶんまだまだ、ブラッシュアップしていく予定だったんだろうなあ、コロナのせいで、それができなかったの、ほんとに悲しいね。
新型コロナ、ニュースもTwitterとかSNSもキツい意見が多くて疲れちゃうし、あんまり気負いすぎずに、疲れない感じで、今家の中でも楽しめる娯楽を楽しんだらいいんじゃないかなぁとか、思ってます、のんびり屋。
それで、収束してからその分、たくさん舞台とか観に行けたらいいね。
とりあえず私のロミジュリはおしまい。
チケット払い戻してきて完全に私の中で終了したので、思ったことをたくさん書きました。
大阪公演も、お客さんも演者さんも含め、一番多くの人が納得する形で、うまくいくといいなあと思います。